現在、弊社も開発を進めているトポロジー最適化設計をCFRP設計に応用する設計技術、それを具現化する製造技術について、経緯、流れ、情報を簡単にまとめていきます。
共同研究のスタート
羽生田鉄工所のコンポジットセンターは、「CFRPのトポロジー最適化設計を元とした電気飛行機の最適な構造設計手法及び成形技術の実用化に向けた開発」というテーマで、2018年、JAXA航空技術イノベーションチャレンジ powered by DBJにて、JAXAとの共同研究を開始しました。
この共同研究は、最大3年間(一年毎の審査更新)、航空機で使用できる品質保証性を確保できる技術の「基礎」を作ることを目標にスタートし、2022年3月末で期間満了となります。
研究の概要
トポロジー最適化シミュレーションは、用途の決まった部品について、部品の設計領域*1、使用する材料、加える力(種類、大きさ、位置、向き)などのパラメーターを設定して、指定した質量、その他指定した条件の中で設計が成立する(使用に耐える強度が得られる)形態を出力するシミュレーションです
(*1出力される形態のデータが、指定した空間からはみ出ないようにするために設定する領域。)
トポロジー最適化シミュレーションを簡易的に示すとこのようなイメージです。



色づいている箇所が最適化シミュレーションの出力結果です。
上記を踏まえてトポロジー最適化を簡単に示すと、「指定した設計領域の中で、この用途、材料であれば、このくらい肉抜きができます。ということを示すシミュレーション」です。 そのデータを3Dプリンティング、鋳造することで、ユニークかつ材料ロスの少ない、軽量な部品を得ることができます。
このように、通常の最適化シミュレーションによって出力される形態は、三次元的に複雑であり、CFRPによって具現化するには向きません。
本共同研究では、通常のままでは使えない最適化シミュレーションの結果をCFRPの設計に応用する設計技術開発と、それを実際に具現化するための生産技術開発を実行しました。
製造方法
最適化設計したCFRPは、その製造方法を自由に選択可能ですが、本研究の中では特にTFP(テーラードファイバープレースメント)による生産技術を進めています。
自動生産技術としては、CFRPの3Dプリンティング技術による出力も考えられますが、2018~2021年の間に、簡単に利用可能な設備として3次元的に連続繊維で出力可能な3Dプリンターが近隣になかったことから、生産技術自体は確立されているTFPを応用する形で実施しています。
技術の特徴
メリット
・使用する炭素繊維の量が少なく、ロスが最小限となる。
・最大限の軽量化設計が可能。
デメリット
・対応できる生産者が限られる。(いまのところ)
・コストが上がる(量産体制が構築されれば、逆に下がる。)
コスト、デリバリー面で、デメリットもありますが、これまでに実現できなかったことを実現しうる技術であり、生産体制の構築も進みつつあることを考えると、デメリットを踏まえても使用可能なジャンルが増えていくものと考えています。
応用
CFRPの配線一体化成形(特許出願中)への応用
異能ベーション2020年破壊的な挑戦部門に採択された「最適構造と基板・センサー・配線を一体成形した無人機の量産手法の確立」にて、本技術で最適化した構造内部に、基板・配線を一体化して成形する技術を確立しました。

銅組紐部分が配線(電線)、黒い線が炭素繊維(補強・構造)これらに樹脂を含浸させてコンポジット部品として成形。
基板・配線の一体化これには、以下のメリットがあります。
・配線が構造内に入るため、内部空間を広く取ることが可能。
・炭素繊維により振動の影響を減らすことが可能。
弱点もあります。
・基盤を搭載した場合、破損すると構造ごと取り替えになる。
・製造のコストがかかる。(量産環境が整えば、逆に安価になる。)
ただし、上記の弱点が関係しないケースもあります。
・メンテナンスしない(使い捨てる)用途(人工衛星ほか)
・構造ごと取り替えて採算が取れるケース(運用コスト等による)
今後について
技術も、材料も、使われて初めて意味を持つものですが、どのジャンルでも、使途に応じたローカルな課題が発生することが考えられます。
弊社は、適用先の拡大、生産機能強化等を進めつつ、都度、課題をクリア、蓄積して広く、品質が保証可能な技術として仕上げていきます。
共同研究、開発、技術の適用先を随時募集中です。
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